SUREFIRE 6Pが傑作と呼ばれる理由を解説

日常生活の中で懐中電灯を実用本位で使うのならば、オーム電機やジェントスといった国産メーカーのLEDかつ単三仕様(ニッケル水素充電池も使える)タイプが一番実用的だ。何より電池の入手のしやすさとそのコスト、電池の持ちを考えれば、それがベスト。

だが、敢えて米国の法執行機関御用達の『SUREFIRE』、それもキセノンバルブ仕様ライトを選ぶロマンはどうだろう。

アカリセンターさん公式ブログの『SUREFIRE 6P キセノン』の記事で以下のように、言い切る形でキセノン球について書かれているので引用させていただいた。

『キセノンに関して言えば現状「ロマン」以上の性能はありません。』

引用元 http://akaricenter.blog.jp/archives/52188131.html

ロマン以上の性能はないなんて、なんと良い響きだろうか。ところが、SUREFIRE 6P。こいつは一見、調った紳士面をしているが、バルブ交換次第でいかようにも化けるポテンシャルを秘めている。いわゆる秘めた野獣性ってやつである。

 

今回はそんなSureFireというメーカーと、同社製キセノンライトの傑作であるSureFire 6Pについてご紹介してみたい。

SureFireは1984年、ロサンゼルス市警のSWATチームからショットガン用のレーザーサイトを借りたいという要請があった経験からLaser Products創設者のジョン・マシューズは法執行機関が求めるものを考えた結果、当時としては画期的な武器に取り付け可能なライトというアイディアでした。そのアイディアからLaser Product戦闘用の丈夫で高出力かつコンパクトな照明ツール、武器に取り付けるものから盾用のライト、バトンライト、戦力として一時的に視界、バランス感覚、平衡感覚を失わせる明るさとパワーのあるフラッシュライトを作り、Laser Productから現在のSureFireと名前を変えた現在、SureFireは最高のフラッシュライトの同義語として世界中で認知されています。

引用元 Amazon (シュアファイア)SUREFIRE SIDEKICK コンパクト LED キーチェーンライト SIDEKICK-A

もともと、SureFire社の旧社名はLaser Products社であった。本来、『ライト』とは単に闇を照らすものであるはずだ。なぜLaser Products社が目潰しライトを作り始めたのか。その理由は警察からの要望に基づいた社長のアイデアだったことがわかる。

その後『SUREFIRE』に社名を変えた同社では主に懐中電灯(トーチライト/ハンドライト)を製造している。また、同社は専属のインストラクターによる法執行官を対象としたタクティカル・テクニックのトレーニング・サービス役務も提供している。

SUREFIREの原点といえば、同社がこれまで出した製品の中でも最も美しい6Pだ。6Pにも初期のモデル、いわゆるクラシックと、後に発売されたオリジナルがあるが、クラシックこそが至高のデザインだ。

SUREFIRE 6P(旧型)との違いと、当時の競合他社製品との比較広告

リニューアルされた6Pオリジナルも機構は同じなので、簡単にバルブ交換できる。筆者は安価な社外バルブでLED化した。

現在は後継の6PXシリーズがリリースされているが、そのデザインは大きく変更された。

本項で紹介するSureFire 6PのPは『パーソナルモデル』という最も基本の区分にカテゴライズされていることを表している。航空宇宙用のアルミニウム合金削り出しによって製造されるSureFire 6Pは軍用にも耐え得る強度を持ち、実際にアメリカ軍に広く普及しているハンドライトだ。

SureFire 6Pには1988年から2000年まで生産されたいわゆる旧型モデル『クラッシック』、そして2001年からは全長をやや伸ばして、ヘッドに転がり防止の六角をつけるなど、全体のデザインを大幅にリニューアルし、その後も細かな改修が行われながら2017年まで製造販売された6P Originalがある。

SUREFIRE 6P(旧型)との違いと、当時の競合他社製品との比較広告

※画像は現行の6Pオリジナルで、旧型とデザインが異なる。

現在主流で省エネに優れたLEDではなく、光源はキセノン球であったが、当時の懐中電灯としては非常に強力であった。

そしてSurefireのなにより優れている点は、マグライトなどそれまでの懐中電灯の宿命であった照射面にダークスポットが出ないこと。つまり、照らされた光の中央に影が出ないのだ。この影のない強烈なスポット光をこれまでアメリカ国内の犯罪者たちは法執行官の手や、SWAT隊員の持つサブマシンガンから幾度となく顔に直射されてきたのだろう。

これがキセノンバルブの照射。画像からだとわかりにくいが、肉眼で見るとかなり濃いオレンジ色なのだ。ちなみに、アカリセンターさんによると、6Pを購入した人から『なんで光が楕円なんですか』という不良品を疑う質問が来るそうだ。見てもらえればわかる通り、やや楕円形のようないびつな中心光がP60バルブの特徴なのである。

SUREFIRE 6Pにはストライクベゼルがない

SUREFIRE 6Pにはストライク・ベゼル付きの『ディフェンダー』というセルフディフェンスに主眼を置いたモデルもあるが、6Pオリジナルは見てのとおりプレーン・ベゼルで、トゲはない。このストライク・ベゼルに関しては『日本国内で突起のついた懐中電灯を持ち歩く法的な危険性』について、別のページで個人的な見解を載せた。興味があれば、一読を願う。

【個人的な見解】タクティカルライトは違法で検挙される場合がある?

 

高出力のキセノンライトはデリケートなので扱いは注意が必要。ランニングコストもかさむが、替えバルブは社外品も豊富で安価に購入可能

6Pの銀色に輝く反射鏡(リフレクター)はオレンジの皮のような、その名も『オレンジピール』加工がなされている。1インチサイズのヘッドによって強烈なスポット光を直射させる一方で、広範囲をむらなく照らすことも出来る。

キセノンライトの弱点は、そのキセノンバルブの寿命にある。LEDは基本的に長寿命で寿命が無いに等しいが、キセノン球には数時間程度の寿命しかない。

しかも連続点灯如何によっては熱によって数十分で寿命を全うし、レンズがポリカーボネートであれば、熱で溶けることもあるので危険だ。決してスイッチを切り忘れてはいけないし、カバンの中で不意にスイッチが入るようなことがあってもならない。

6Pのプッシュスイッチはいわゆるモーメンタリースイッチで、最後まで押し込むようなものではなく、やや強く押し込んでようやく2ミリほど沈む仕様だ。モーメンタリースイッチは指でスイッチを押し込んでいる間だけ点灯し、指を離せば消灯してしまう仕組みだ。敢えてそのような『切り忘れ防止』仕様になっている。

しかし、それでは常時点灯できないので不便では?とも思えるが、心配ご無用。6Pにはもうひとつのスイッチがある。テールキャップを回して点灯させるのだ。さらにプッシュスイッチによる誤点灯を防止するため、テールキャップ(テールスイッチ)を点灯時とは逆方向に回すことでプッシュスイッチを押し込めなくなる『ロックアウト機構』も備わっている。

もちろん、交換用のキセノンバルブ(P60)は売られているので、バルブが切れれば交換すればいい。ただSUREFIRE 6Pはバルブアッセンブリーごと交換になるため、一般的なバルブ式懐中電灯と比べると、その交換費用は高くなる。

6Pの構造はいたってシンプルだ。ヘッド、バルブ、チューブ、テールスイッチ、そして電池。

6Pのライバルであるストリームライト社のスコーピオンは6Pと違って、キセノン球そのものだけ取り換えることが出来、バルブ一個あたりの価格も経済的だ。しかも最初から予備球が1つ付いているので、とてもお得だ。

光量はスコーピオンが78ルーメンでSUREFIRE 6Pが65ルーメン。スコーピオンはワイドとスポットを調節できる仕様なので、SUREFIRE 6Pよりも実用的である。当時のアメリカでは予算潤沢な選りすぐりの特殊部隊がSUREFIRE、頭数が多いわりに装備品の予算の少ないパトロール警官などには安価なスコーピオンのシェアが大きかったとされている。

モルダー捜査官愛用の『ストリームライト(STREAMLIGHT)スコーピオン』レビュー

なお、6Pには日本警察に怒られそうなトゲトゲを付けてクリックスイッチに換装した『6P Defender』、さらにSUREFIRE純正のLEDバルブP60L(公称80ルーメン)をはじめから搭載した『6P LED』および『6P LED Defender』というモデルもかつて存在した。いずれもすでにP60Lバルブ含めて廃版になっているが、P60Lについてはまだ在庫があるショップもあるようだ。

筆者は価格の安い社外品の高出力LEDバルブでLED化させた。その手法を以下のページで解説している。

Veeki製LEDバルブでSUREFIRE 6PをLED化してみた

電池はこちらで解説。

SUREFIRE 純正電池『SF-123A』とは?

SUREFIRE 6Pのメリットとデメリット

最後に6Pの長所を列挙して締めたい。

  • ヘッドとチューブを分離出来るので、ほかのモデルより群を抜いてカスタマイズ性が良い。すなわち抜群。
  • 社外品のP60バルブ互換のLEDバルブと簡単に換装可能。ドロップ・イン・モジュールの真髄ここにあり。
  • LEDバルブ+16650充電池でバルブ代も電池代もほぼゼロに!
  • すべてのタクティカルライトにつながる系譜の原点を味わえる。
  • 未使用で寝かせておけば将来的には値上がりして資産価値もある……!?
  • 2019年現在、製造が再開しており、手に入りやすくなった。

そして、6Pのデメリットというか、惜しい点(悪い点ではなく)を列挙してみた。

  • 金属ボディなので冬に冷たい、傷つきやすい、酸を扱う業務で危うい
  • キセノンバルブは短時間照射での運用が基本。
  • キセノンに関して言えば現状「ロマン」以上の性能はありません(アカリセンターさん談)。
  • LEDバルブ換装などカスタム前提なので本体+社外バルブ代がかかる。もちろんキセノンのまま使うのも自由。
  • 16650は入るが、18650は入らない。ただし、ボアアップ加工を行う業者(アカリセンターさんなど)もある。※削ると生涯保証は無効。