『X-ファイル』の初期に登場した強力ライト『Maxa beam』
シーズン1でとくに出番の多かったのが、とても巨大でごついMaxabeam。懐中(ふところ)に入る電灯どころか、これは誰が見てもサーチライトである。
スーツのポケットに携行不可能なこの巨大な手持ちのサーチライト・Maxabeam(マクサビーム)は重さ4キロ。75ワットのキセノンランプを搭載し、2キロ先まで照射可能。映画『ジェラシックパーク』にも登場。なおモルダー御愛用のグロック19は実弾フルロード状態で850gです。
25年前のライトだが、出力は現在の機種にも引けを取らないマックス12,000,000 CandlePower。
こんなサイトもある。フラッシュライトを持つスカリーの画像を集めたスプーキーなサイトである。
Scully’s Flashlight
基本的には森林地帯など屋外での捜査活動で重宝された強力なサーチライトだが、謎の海洋生物の恐怖を描いたシーズン6の第13話『アグア・マラ』では、一軒家やアパート屋内の狭い室内でも遠慮なくガンガン焚いて使用していたモルダーとスカリー。
ちなみに『アグア・マラ』ではモルダーとスカリーの持つマクサビームのほか、保安官のマグライト、それに後述する小型ライトを携行するなど、いろいろなライトが登場するのでマニアにはオススメのエピソードですぞ。
『X-ファイル』のシリーズ初期といえばマグライトもはずせない
Xファイルのseason1はいろんな意味で出来が良く、粒ぞろいだ。Xファイルはシーズンが進むにつれ、2人の小道具への細かい演出が省かれていくのは少し寂しい。
それはともかく、誰が何といってもXファイルのシリーズの比較的初期といえば、クリプトン球仕様のマグライト(MAG INSTRUMENTS社製)だろう。
ちなみにMAG LIGHTではなく、MAG LITEが正しい綴りだ。ピンナップでも単一電池仕様のマグライトを持ってポーズを決めるスクイーズでの二人は有名だろう。
180センチのモルダーでも、とても背広のポケットに携帯できない単一電池仕様のマグライトに魅せられて、放映当時は購入した人も多かったのではないだろうか。
発売当初からウン十年。その形をほぼ変えず、時代のニーズにしっかり追いついて、LED仕様もリリースされているマグライト。
マグライトの詳しい歴史と、創業者がなぜマグライトを中国製にしないのかは以下の記事で解説している。サムネがアレで申し訳ない。
さて『X-ファイル』のシリーズ1だけ見ると、モルダーとスカリーって本当にマグライト愛好家なんだなって思ってしまう。
もちろん、個人の好みではなく、単に支給品として貸し与えられた官給品を使う捜査官であるという設定に過ぎず、選択肢が限られていた当時の時代を映しているだけなのだ。実際、マグライトは警察や軍隊から圧倒的に採用率が高く、FBIの二人が使っていても違和感はない。
ただ、マグライトもD.CELL 6とか長いモデルは笑っちゃうほど長いうえに、太くて重いのはライト以外の使用方法も考慮しているからである。その方法についてこの記事で詳しくは書かないし、当時のニュースを見ていた人なら知っていると思うが、ロス市警が装備するマグライトはロドニー・キング事件を引き起こし、ロサンゼルス暴動の原因にもなったほどである。この件を受けてロス市警ではマグライトをパトロール警察官に貸与することをやめて、小型のペリカン製ライトに変更したというエピソードも興味深い。
ある意味、マグライトは時代を映す鏡である。
懐中に携行できないサイズなので、暗がりを探索する場合は直前に車に乗っているシーンが多いように思えるから、FBI本局近郊での捜査の際などは、局の捜査車両に常備しているものと思われる。さらに初期のころの出張時にはこれを出張カバンに入れて一緒に出張していたのだろうか。それとも現地の警察やFBI支局から借りるのだろうか?まさか現地の雑貨ショップでその都度、局の経費で買うとか……?
悲しいFBI捜査官たちの経費にかかる攻防戦は以下でウンチク語った。
そして、アパートの消毒作業(伏線)のため部屋を追い出されたのを口実に、DCからマサチューセッツ州ミラーズグローブへ車でフラッと出かけて1人で夜空を見上げているロマンチックなモルダーを見られるのが、シーズン3のエピソード12『害虫』だ。
この回で政府が住民に秘密裏に運営しているゴキブリハウスに興味本位で捜査のため潜入するモルダーが構えていたのはマグライトの2-CELL Cだろうか。休日なのに持ってきているこの用意周到な性格。モルダーはマグライトのほか、ピッキングガンまで携行している。これはもう日本なら問答無用で緊急逮捕事案だ。
で、モルダーはスカリーと携帯で通話をしながら家屋に不法侵入。いわゆる、僕はFBI特別捜査官だから非番中に興味本位で公的施設に侵入しても違法性は阻却されるものと解されていますってやつだ。これら彼の不法行為の数々が積み上げられ、後に捜査局からの追訴につながってしまうのはご愛嬌だ。解されてねえし何がご愛嬌だ。どこの県警だよ。
そして片手にスカリーと通話中の携帯、片手にマグライトを持って真っ暗な屋内の中に突入したモルダーは、さざめく壁紙の下に蠢く何かを見つけてしまう……。
マグライトの光に誘引されたのか、壁の中からワラワラとゴキブリが出てきた……。しかし、この直後、よりによってマグライトの電池あるいは電球が切れてしまい、真っ暗に。
『スカリー、ンゴッ、ゴキブリだあっ!……フォウッ!懐中電灯が切れたっ……!』と叫ぶ悲痛なモルダー捜査官。スカリーは「だからマグライトの電球は切れやすいから捜査活動の前に必ず交換しとけって言っただろうが!」と怒鳴りはしなかったが、ゴキブリに囲まれ絶体絶命のモルダー捜査官。があああああああっ!そこに現れたのは!!
その直後『あっ大丈夫、もう切るよ』と普通に電話を切るモルダーにスカリーは困惑。モルダーの危機を救ったのは農務省いきもの係の研究者バンビ・ベレンバウム(美人……かどうかは人によるだろうが、どうやらモルダーのタイプだったことは確かのようだ)その人であった。
結局、再度モルダーからの電話連絡でモーテルの泊り客が死んだことを伝えられたスカリーは重い腰を上げ、D.C.のジョージタウンに所在する自宅から、300キロは離れたマサチューセッツのミラーズグローブ(架空の街)へ、モルダーの捜査応援のために緊急出動することになる。稚内から網走くらいあるぞ……なんだ近いのか。お前、どこ住んでんだよ。
さっきまで自宅でくつろぎながら、アイスクリームを頬張り、犬を洗ったり、愛用の拳銃のバレル・クリーニング(火薬カスふきふき作業とオイル塗り塗り作業)などをしていた彼女は非番捜査官。なのに、自分で車を運転して来たんだからスカリーは本当にご苦労だと思う。せめて支局の職員の運転する覆面パトカーで緊急走行で行くとか、ヘリとか。ヘリは早そうだが、局の許可をとろうにもモルダーがゴキハウスに不法侵入しちゃってますしなあ。ミキハウスみたいに言うのやめなよ。
それにしても、サイズの割に暗いのはさすが95年当時のマグライト。まあ、10センチくらいの至近距離で壁を照らすならさほど暗くもないが……。
一方、フルサイズのマグライトに比べると出番は少ないが、全長15センチ程度の小さいミニマグ(MINI MAGLITE)も二人は捜査に活用している。おそらくマグライト3-Cell CかDは捜査車両やレンタカーへの常時搭載で、コートのポケットにはEDCとしてミニマグを常時携行していたのだろう。ちなみにスカリーは検視作業もこなすため、必需品といえるペンライトもEDCだ。通常の捜査や探索に使うライトとは別に、二本持ちなのだろうか。
フルサイズモデルに比べ、ペンライトサイズのミニマグは照射範囲こそ狭いものの、当時、小型軽量のペンライトとしては優秀だったのだろう。明るさはおそらく10ルーメン程度だと思う。ちなみに筆者が愛用しているSUREFIRE G2X LEのローモードが15ルーメンなのだが、この程度の明るさでよく当時はがんばっていたなあ……。
season1のFile No.21 (1X21) 「輪廻」 BORN AGAINでは、モルダーとスカリーが民家突入時にかざしていた。ビームが良く伸びていてカッコイイ。もちろん撮影用のスモークマシンあっての魅惑的な演出である。
そして、ミニマグを手にしたモルダーが、ハリウッド血液バンクの地下を探るのがシーズン2の第7話トリニティだ。こちらも鋭いビームが闇を切り裂く場面が描かれていた。
MINI MAGLITEには単四電池2本仕様の2AAAと単三電池2本仕様の2AAがある。同エピソードでモルダーが使うのは単三電池2本仕様の2AAだろうか。
とにかく当時のマグライトはクリプトン球だったため、暗かったしダークスポットも目立っていた。その後、キセノン仕様になり、現在はLED化され、ダークスポットもなくなり、根強い人気がある。
しかし、むしろマグライトの頼りなさ、不気味なチョウチンアンコウみたいな弱いトモシビこそが、本作をよりオカルトチックに仕上げることに貢献したのではないだろうか。
逆に言うと、中盤から登場した警察用の高出力で小型のキセノンライト(後に詳しく解説)はモルダーとスカリーの捜査能力向上に格段に貢献したかもしれないが、本作初期シーズンの持つおどろおどろしさを悪い意味でぶち壊した可能性もなくはないだろう。最新の2016や2018で使用されている後述のハイパワーなLEDライトなら、なおさらだ。
そう思うと、マグライトには感慨深いものがある。まあ、初期のころから必要に応じてマクサビームで爆光を放っていた彼らであるのだが。
マグライトと並行使用された小型軽量ライトUnderwater Kinetics SL4
シーズン3第21話 「Avatar (化身)」にて、警察の押収車コーナーでスキナーの車を入念に調べているスカリーとモルダー。ちなみになんと、モルダーは普段、折り畳みナイフも所持。おい。スカリーが手にする全長15センチくらいのこの小型ライトUnderwater Kinetics SL4に注目。
また同seasonの22話『ビッグブルー』にて愛犬クイークェグを捜査に仕方なく連れてきたスカリーがクイークェグのお散歩時に使っていたり、シーズン5第11話 「KILL SWITCH」にて、重要参考人の女性プログラマーが身を隠す港のコンテナハウスへ突入し、同女の身柄確保の際や、そのあとの関係先捜索などにも使用していた。
Season4の第20話「スモール・ポテト(Small Potatoes)」ではズボンの右ポケットから颯爽と取り出すモルダーがいい。
実は驚くことに、このライトは本来ダイビング用の水中ライトである。非常に実用的な懐中電灯で、クリプトン球のマグライトに比べるととても明るく、ヘッド全体から漏れる光が周囲を照らし出し、エルビス・プレスリーが42歳で死んだこともわかってしまうほど(実際はどこかで生きてると大部分のアメリカ人は信じている)照射範囲がとても広いのだ。樹脂製でいかにも軽そう。色は各カラーあり。ポケットにギリギリ入れて持ち運びしやすそうなサイズなのもgood。結構、Xファイルでは登場回数の多い、息の長いライトである。
そして次のページでは、モルダーとスカリーがついに持ち出した小型強力な次世代型ライトをご紹介したい。
[…] 『X-ファイル』でモルダーとスカリーが使ってきた懐中電灯を考察する! […]