SUREFIREのエントリーラインとも呼ぶべき廉価なG2Xシリーズ。その魅力に迫る。
SUREFIRE G2Xシリーズとは
さて、近年ではFENIXなど中国ブランドの台頭に危機感を抱きはじめつつも、揺るぎなき地位と未だ衰えぬ人気を持つSUREFIRE。同社製品はアメリカ製というアドバンテージを維持しつつ、エントリーモデルの価格帯をグッと下げてきてくれたことも久しい。
ではそのSUREFIREのG2Xシリーズとはどんなシリーズなのか。アカリセンターさんによれば、G2Xはフルアルミ製のSUREFIRE 6PXの樹脂モデルバージョンとのことだ。
もともとは旧モデルにG2という樹脂モデルのラインがあり、G2Xはそのアップグレードされた後継バージョンだ。
そしてG2XシリーズはSUREFIREがリリースする1インチ径のボディを持つパーソナルシリーズの中でも最も廉価で入手しやすい実用的な製品群だ。
なお、アカリセンターさんによれば、6PXシリーズのうち、6PX PROは将来的にG2X PROに統合され、6PX TACTICALのみのラインナップとなるそうだ。
G2Xシリーズの3機種はそれぞれ何が違うのか?
さて、熱心なアウトドアマンの必需品ともなっているG2Xシリーズには民生向けのG2X ProならびにG2X Tactical、そして法執行官向けの「G2X LE」の3種がある。
当初、ProおよびTacticalは200ルーメンで発売されたが、その後320ルーメン(LEは400ルーメン)にアップグレードされ、2018年現在流通している最新バージョンでは3モデルすべてで600ルーメンという非常に頼もしく、実用的なルーメン値を持っている。
G2Xシリーズのヘッドはこれまでの6P同様、航空機の機体に使われる航空機用アルミだが、ボディ部に使用されているのは非常に腐食性が高いSUREFIRE独自のNITRLORONと呼ばれるポリマー素材である。樹脂ボディは厳冬期の2月の屋外で握っても身震いしない。
現行の3種にデザインの違いはないものの、ヘッド側面の刻印に違いがあり、プロは『D』、タクティカルは『C』、そしてLEは「LE」の刻印がある。『LE』はLaw Enforcement(法執行官)の略で、つまり警察官やその他の法執行組織に所属する捜査官向けに開発された商品となっている。
G2Xのベゼルは流行のストライクベゼルではないが、ギザギザの『ローレット加工』が施されている。樹脂製かつ鋭利なものではないので、単にデザインだろうが、職質の警察官に口実を与えかねない懸念はぬぐいきれない。全長こそ短く、マグライトの様に金属筐体でもないので軽犯罪法違反になることはないと思うが「ツイてるね、ノッテるね、武器だね」なんて因縁づけはごめんだ。
さて、これら3種の具体的な違いだが、結論から言うと、現行モデルではそれぞれの機種で調光モードの順序が違う。
G2X Tacticalはクリック・スイッチ方式で600ルーメンのみの調光モード。
G2X Proはクリック・スイッチ方式で15ルーメン→600ルーメンとなる調光モード。
G2X LEはクリック・スイッチ方式で600ルーメン→15ルーメンとなる調光モード。
では、この調光モードの順序にどんな意味があるのか。それは後述し、その前にリニューアルに伴う仕様変更について記したい。
600ルーメンへのリニューアルで、G2X TACTICALに大幅な仕様変更が加えられた
※スイッチの仕様については2018年に600ルーメンへとアップグレードされた際の仕様変更で、それまでモメンタリー・スイッチ仕様だったTacticalがクリック・スイッチ方式に改められ、現行のG2Xシリーズはすべて同じクリック・スイッチ仕様となった。
600ルーメン版にアップグレードされた新モデルが出た直後、筆者はアカリセンターさんのサイトに掲載されている新G2X TACTICALの画像のうち、テールスイッチ部分がプロ版と同じになっているほか、商品説明にはクリックスイッチと書かれているのが気になった。不思議に思って同ショップに尋ねると、600ルーメン版のプロとタクティカルは外見上、ヘッドの文字の違いのみで全く同じとの説明を受けた。
そう、これまでの320ルーメンまでのG2X TACTICALは6P等でも使用されていた、故障などのトラブルが少ない、シンプルながら信頼性の高いモメンタリー・スイッチだったが、今回の600ルーメンへのリニューアルに伴って、G2X TACTICALはフォワード・クリッキー・スイッチへと仕様が変更されたのだ。
おそらくテールスイッチの共通化を図ることで、製造コストを下げたいシュアファイヤ社の思惑があるのだろう。
クリッキースイッチのメリットと欠点
シュアファイヤ製品には、『押している間だけ点灯し、指を離せば消灯する』仕様のモメンタリー・スイッチと、『カチッと音がするまで押し込めば、指を離しても点灯状態を維持できる』仕様のフォワード・クリッキー・スイッチがある。一般的なホムセンライト(家電ライト)では間違いなく、クリッキースイッチだ。
では、指で押し続けていないと点灯しないモメンタリー・スイッチのメリットとは何なのか。
モメンタリー・スイッチは押し続けないと点灯できないが、点灯と消灯を繰り返す軍事作戦ではON-OFFの繰り返しが非常に楽であるため、重宝される。また、忍び寄るSWATがカチカチと不要な音を犯人に聞かせるデメリットもない。
一方、クリッキースイッチは一見、便利に思えるが、部品の磨耗が避けられず、故障ならびに耐久性の低さがデメリットだ。
なお、上記のどのモデルでも『半押し点灯』が可能となっており、テールキャップのラバーボタンを最後までカチッと押し込んでクリックさせなくとも、軽く親指で押し込む『半押し』動作だけで点灯、ハイとローモード切り替えが可能。
半押しで点灯させた場合は親指を離せばそのまま消灯するので、モメンタリー・スイッチと同様の使用感だ。クリッキー・スイッチに半押し機能を持たせることで、結果的にクリッキー・スイッチでも、モメンタリー・スイッチとほぼ同様の使い勝手の良さとなる。カチカチクリック不要で感触および使い勝手は最高に良い。これでは、モメンタリー・スイッチも時代遅れになってしまうはずだ。
ただし、アカリセンターさんによれば、フォワードクリッキースイッチの操作自体にもデメリットはある。
フォワードクリッキースイッチでも同様の操作自体は可能ですが、実際に使用すると誤って押し切ってしまい、クリックがかかって消灯しないなど、ストレスがかかった状況では一段劣る部分がございます。
半押しのつもりで押し込んだものが、最後までカチッと押し込んでしまう失敗は筆者も何度かある。慣れの問題だが、ミスが許されない法執行の現場や軍事作戦で使う当事者たちにとっては、こんなミスのひとつで命を失うこともあろう。ともかく、モメンタリー・スイッチ方式が完全に廃れる事はないのではないだろうか。
また、前述のとおり、クリッキースイッチでは部品の磨耗も不可避。ただ、普段からクリックさせずに半押しで使えば、磨耗は防げるだろう。
この『半押し点灯』機能は日本メーカーの廉価な家電ライトでは搭載していないことが多いので、筆者はどうしてもホムセンの家電ライトよりも、タクティカルなライトを求めてしまう。日本ではジェントスが扱っているドイツのブランド『レッドレンザー』だと、廉価な製品でも『半押し点灯』機能が搭載されており、おすすめだが、ホムセンでは見かけない。
筆者は6Pオリジナルのモメンタリー・スイッチを実際に押して、感触の悪さを感じたので、今となってはクリッキースイッチ派である。普段使用しているG2X LEは半押し点灯が基本だ。
G2Xはどの機種を買うべきか
まず、一般的なユーザーの『日常的な使用』と特定職種の『公務中の使用』における両者のライトの運用方法を比較しよう。
法執行官がSUREFIREを持つ理由とは何か。言うまでもなくその強烈な芯の太いスポット光によって対象者、とくに襲い掛かってこようとする者の目をつぶすためだ。つぶすというのは、瞬間的に強い光を浴びせ、視力を一定時間奪い、それによって相手を怯ませ、その行動を抑制するというものである。
つまり、法執行の現場で求められるライトは押し込んだ一発目が常に最大光量であれ、というわけだ。押し出し一発で常時600ルーメン、そして2クリック目で違反切符を切る際などに使い勝手の良い15ルーメンの低出力モードに切り替えられるのが、法執行官向けのLEというわけだ。LEは一般の人でも日常使用と緊急時のセルフ・ディフェンス的な使い方をしたいという場合におすすめできるモデルだ。
ただし、セルフディフェンスとはいってもライトを暴漢の顔に向けて光による幻惑で直接視力を奪うような法執行機関職員が行っている本来の運用方法を民間人が行うことによるその護身効果には、筆者は懐疑的だ。
筆者が想定しているものはそうではなく、あくまで夜間、不審者が近づかないようにあらかじめ強力なライトの光で周囲を照らし、周辺警戒に努めるような運用を想定している。これについては最近流行のトゲトゲいわゆるストライクベゼルの考察についても書いた。
一方、15ルーメンの低出力モードは不要で、必ずどんな状況でも600ルーメンの大光量で照射してくれるほうが安心感があるとか、600ルーメンの大光量を相手に浴びせて文句言われても黙らせる国家権力を持っている……という場合は600ルーメン・オンリーのTacticalがおすすめだ。Surefire自体、もともと法執行機関用の非致死性武器「目潰し用ライト」というコンセプトなのだから。ただし、600ルーメンで手元や足元を照らしたい場合はSurefire特有の強烈なスポット配光によって、対象物が白く消失してしまうので、日常生活では使いにくいことを追記しておく。
逆に、600ルーメンのハイパワーも欲しいが、そんな大光量を常時出すと撮影監督に殴られるとか、高価なcr123電池を節約したい場合は押し出し一発目で必ず15ルーメン、2クリック目で600ルーメンになるProがおすすめだ。
このようにG2Xシリーズでは、それぞれのモデルで調光モードの順序が違う。ただし、上記のいずれのモデルも配光パターン自体は同じで光の伸びは文句なし。320ルーメンモデルを夜の海岸で目いっぱい使ってみたが、公称値183メートルまで芯の強いビームが飛んでいく。
ただ何度も言うが、目潰しコンセプトであるがゆえにハイモードではスポットが強すぎて、手元や足元などを照らす場合は使いにくい。現行の600ルーメンモデルならなおさらだろう。法執行用目潰しライトは本来、日常生活で使おうとすると苦労するので、やはりハイ&ローの両モードを搭載したLEかProをおすすめしたいところだ。
なお、G2Xには近年、G2X with MaxVision (G2X-MV)というモデルもラインナップされた。
JRも車両内での不審者対策として近年、G2X with MaxVision (G2X-MV)を導入している。
【SUREFIRE】日本の公共交通機関に『不審者対策』で採用されたG2X with MaxVision (G2X-MV)