事件の経緯
2016年9月4日、北海道で水難事故が起きました。
北海道網走市の海岸に位置する網走川で、先日から台風10号の影響で増水し河川氾濫警報が出されていたにも関わらず、北海道立網走桂陽高校の野球部員が遊びに来て80メートル離れた対岸まで渡ろうとして二名が流されてしまったのです。
網走川は当時、通常より50~60センチ程度も水位が高くなり、流れが速く茶色く濁っていたとのことです。何故高校生らはこのような危険な状態の川を渡河しようなどと無謀な行為をしてしまったのでしょうか。
網走川の高校生水難事故について詳しく解説していきます。
1~3年の部員ら計11人で網走川に来ていた
現在までの報道によれば、事故当日、同高野球部の男子生徒1年生から3年生まで11人が練習の終わった帰り網走川に来て、このうち1年生と2年生の5人が川の中に入ったとのことです。その目的は「80メートル離れた対岸まで渡る」というものでした。3年生のみは入らなかったようです。
北海道新聞の報道では、下記のように報じています。
網走署などによると事故は4日午後3時半ごろ発生。2人を含む野球部員の1、2年生計9人が学校での練習を終え、勉強をしようと自習スペースのあるエコーセンターに向かった。途中で偶然出会った3年生2人と合流し、1、2年生の5人が同センター横を流れる網走川の対岸を目指して川に入り、先頭の2人が溺れたという。
典拠元
どうやら、勉強のできる公共施設へ自習のために向かう途中に網走川があったようです。
https://goo.gl/maps/tBEYb6uER6B2
オホーツク・文化交流センター、通称エコーセンター(北海道網走市北2条西3丁目)は図書館のほか、生涯学習や芸術文化活動を目的として運営されている公共施設とのことです。
さらに3年生とは帰り道に「偶然」出会ったようです。ただ、高校生らは「川へ遊びに来た」という朝日新聞などの報道も一部でありました。
網走署や高校によると、同校野球部の男子生徒ら11人が部活動後に河川敷に遊びに行き、このうち5人が川に入った。
遊びに行ったのか、学習のため公共施設へ向かう途中に川に寄ったか、複数の報道があるので判断が付きかねる状況です。
しかし、事故当日の網走川は先日からの台風10号により、とても人が入が近づいたりましてや川に入ったりできる状態ではなかったとされています。その前には台風による豪雨で道央の深川市と南富良野町で石狩川と空知川が氾濫し、大規模な水害も発生していました。このように北海道内の河川は数週間前から警戒が必要になっていました。
また、東北の岩手県では老人ホームが付近の川の氾濫により大量の土砂が流れ込み、入所者9人が死亡するなど台風による大雨の影響で大変危険な状態になっていました。このように河川氾濫の恐ろしさはテレビで何度も報じられていました。
当時は台風10号などによる大雨で網走川の水位は通常より約50センチ高く、「氾濫注意水位」に達していた。
引用元 毎日新聞社報道サイト
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00000033-mai-soci
毎日新聞社ではこのように報じられていますが、事故当日のニュース映像を見ると本当に網走川は茶色くて水流も激しく恐ろしく、濁流の様にさえ思えました。この氾濫した川のなかに、なぜ5人は入って行ってしまったのか、怖くなかったのか、不思議でなりません。おそらく彼らは制服姿であったと思いますが、とても膝までスラックスをまくって済むほどの水位ではなかったと思います。へたをすれば、シャツまで濡らすくらいの水位ではなかったのでしょうか。制服を茶色い川の水で汚し、全身ずぶぬれになることに一切の抵抗は無かったのでしょうか。
80メートル離れた対岸を渡るため、川に入る直前に”じゃんけん”で順番を決める
また、川に入る前、高校生らはじゃんけんで順番を決めていたとのことです。その結果、順番は溺れた1年生の生徒二人が1番と2番目で、その後に2年生、そして1年生が続いたとのことです。
付近の男性が「高校生が川に入って危険だ」と110番通報
<川の事故>高校生1人死亡、1人不明 北海道・網走
毎日新聞 9月5日(月)12時25分配信4日午後3時45分ごろ、北海道網走市北1西2の網走川河口近くで、付近の男性から「高校生が川に入って危険だ」と110番があった。
引用元
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00000033-mai-soci
また、NHK札幌報道局の報道でも以下の様に報じられていました。
4日午後3時半すぎ、網走市北1条西2丁目近くの網走川で、「子どもたちが増水した川の河川敷にいて危ない」と近くを通りかかった人から警察に通報がありました。
しかし、別の新聞記事では「118番通報」となっていました。118番は海上保安庁への非常通報用ダイヤルです。後述いたしますが、網走川は河口に面しており、海上保安庁の管轄でもあります。
典拠元
http://www.nikkansports.com/general/news/1705157.html
先頭を進んだ二人は深みにはまっておぼれた
おぼれたのはいずれも先頭を渡っていた道立網走桂陽高1年の渡辺龍太郎さん(16)=同市駒場南1=と鬼塚圭吾さん(15)=同市能取=の二人でした。北海道新聞の報道によれば、先頭が鬼塚さんで2番目が渡辺さんだったとのことです。
同署などによると、2人は網走桂陽高の野球部員。4日の練習後、一緒にいた11人のうち5人が約80メートル離れた対岸まで渡ろうと川に入ったところ、先頭の鬼塚さん、2番目の渡辺さんが川の中央部付近で深みにはまって流されたという。
典拠元 北海道新聞社
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0313087.html
また、当日の網走川は非常に濁っていました。これが捜索の障壁となりました。
警察や消防のほか、海上保安庁も川を捜索
海上保安庁は海上の捜索救難が主な任務ですが、海に接した河口などの場合、川においても救助活動を行う場合があります。
網走川はオホーツク海に面しており、海保では捜索救難用のプロペラ機やボートを出動させて捜索を行いました。そのほか、地元漁協の漁船が2隻捜索に加わっています。
男子生徒はいずれも発見ののち、死亡確認
残念ながら、流されてしまった二人の男子生徒はいずれも川底に沈んだ状態で発見され、救急車で搬送された病院で死亡が確認されました。最初に発見されたのは渡辺さんで、心肺停止状態の渡辺さんを川の中から引き揚げたのは地元漁協の関係者とのことです。
発表によると、5日午前8時50分頃、捜索活動に参加していた地元漁協が心肺停止状態の渡辺さんを川の中から引き揚げた。
引用元
http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/news/20160906-OYTNT50007.html
さらに6日午前になり、鬼塚さんも発見されましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。
6日午前、新たに鬼塚圭吾さん(15)=同市能取=を川底で発見した。
典拠元 jiji
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016090600313&g=soc
鬼塚さんは網走橋付近の川底で捜索隊が発見したとのことです。
まとめ
- 北海道網走市内の網走川に北海道立網走桂陽高の野球部員ら1年生から3年生まで11人が来た。
- 生徒らは「じゃんけん」をして順番を決めて網走川の対岸まで約80メートルを渡ることを決めた。
- 網走川には北海道開発局などが氾濫中尉警報を出していて普段より50センチほど増水していた。
- 高校生らが川に入った時点で付近の男性が110番通報(118番通報とも)した。
- 先頭をわたっていた1年生の男子生徒二人が深みにはまって流された。
- 二人はいずれも川底で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。
このようにまとまりました。川での水難事故は恐ろしく、高校生だとまだ川の恐ろしさを理解していなかったのかもしれません。亡くなられた男子生徒二人に心よりご冥福をお祈りいたします。
現在、男子生徒らが通っていた北海道立網走桂陽高では約40人の生徒が動揺しておりカウンセラーが必要とのことです。さらに同高校野球部では10日に開幕する秋の高校野球北見支部予選の出場辞退を決定したとのことです。やはりこのような事故の直後にはとても試合などができる状態ではないと思われます。
事故を受けて同高は、5日からの前期期末試験を延期し、全校集会と個人面談を実施。その結果、野球部員を含む約40人の心の揺れが大きく、スクールカウンセラーによるカウンセリングを始めた。
典拠元 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/news/20160906-OYTNT50007.html
今後、道立網走桂陽高では命の大切さを生徒たちに教えるとしていますが、氾濫した川の恐ろしさも教育されるよう願うばかりです。
本事件にイジメは無し
高校ではイジメの有無を確認したそうですが、一切なかったと保護者説明会で説明しています。
網走の水難事故:高校説明会で「いじめなし」 /北海道
mainichi.jp/articles/20160929/ddl/k01/040/195000c
今後はこのような死のジャンゲームが無くなるといいですね。