The・かぼちゃワインは漫画家の三浦みつる氏により、1981年に講談社の月刊少年マガジンで連載された漫画で、1982年にはテレビアニメ化もされ、84年まで2年間という長期にわたって放映された人気作だ。硬派でバンカラなれど、ちょっぴり小さめサイズの青葉春助くんと、優しくて大柄な美少女、朝丘夏美くん(愛称”エル”)の二人が学園の仲間たちと繰り広げるラブコメの大ヒット作。
まさにラブコメもののザ・金字塔。
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なにしろ、少年のほうがツンデレというアニメ。うる星と同様に今と逆。
実はThe・かぼちゃワインのプロトタイプになった作品が二つある。三浦みつる氏の初期の読み切り作『武蔵(むさし)とエル』(文庫版番外編に収録)と『彼女(あいつ)はコロッケまんじゅう』という二つの読み切り作品がそれだ。
『彼女(あいつ)はコロッケまんじゅう』には青葉春助とは一文字違いの青葉春平が登場。さらにヒロインを務めるのはこちらもエルとそっくりの大柄で『たくましいからだ』と評されている秋野沙良美。かわい~。
さらに同じく読み切り作品「武蔵とエル」では、武蔵とエルという二人の少年少女が主役だが、こちらもかぼちゃワインの主役二人とそっくりなのだ。ただ、武蔵くんは少し爽やかなバンカラ風となっている。
そう。エルと春助というキャラクターのプロットはすでにこれらの作品で完成されていたのだ。
なお、”小さな男子と大きな女子”マンガ……、実は柳沢きみをさんの「月とスッポン」という作品が元祖だ。月とスッポン、かぼちゃとワイン、富士山と戦車ってわけだ。最後のは何だよ。
かぼちゃワインの魅力
まあしかし、かわいいよなエル。テレビアニメ版かぼちゃワインは実に2年間、95話もの長期にわたって放映された人気作だが、なんとフランスでも89年に放映され、人気を博した。ううむ、エルくんの魅力は世界共通か。しかし、なぜよ?
アニメ版のエルが漫画版に輪をかけてさらに魅力的なのは、当時のアニメスタッフが全員男だからだったそうで、当時のアニメ雑誌では「エルは恋人でもあり、ときに母親でもあるという、男に都合の良い女」として描かれたと語られている。
なるほど、それであんなに魅力的なのか。
ちなみに、劇中に春助がテレビを見ているシーンがあるのですが、そこに映っていたのは「一休さん」。なぜ?
実はこのアニメの前番組は『一休さん』。おまけに「プロデューサー、チーフディレクター、総作画監督は『一休さん』から引き続きの参加」であったというから驚きである。
http://www.style.fm/as/05_column/animesama80.shtml
また、この時代の漫画、アニメの楽しさは画面の隅々に生活感があふれているところだろう。
例えば主人公の部屋の隅に、食べた後のインスタントラーメンのカップが割りばしを突っこんだまま置かれてあったり、細いコーラの缶が転がっていたり。それにしても80年全般のお店のラーメン一杯の値段って300円程度と今の半額。中学生でも気軽に立ち寄って啜ることができるのも魅力だったのだろうか。
The・かぼちゃワインのOPとEDは名曲
OPとEDもまたノリが良くて名曲である。『LはLipのL~♪』でおなじみ、かおりくみこが歌うOPの『エルはラブリー』。春助へ積極的過ぎるエルくんの心情がコレでもかというくらいに歌い上げられており、羨ましすぎる。
そしてOPの『エルの素直な愛情』に対する春助くんのアンサーが、古川登志夫が軽やかに歌い上げる前期EDの『青葉春助 ザ・根性』の『うっせえ!』だ。
昨今話題になった『うっせぇわ』の原曲?として再注目されているが、彼女も女友達もいないのにお風呂で思わず『そーねーそーね~うっせえ!』と歌ってしまいたくなってしまう実にノリの良い曲である。
うって変わって歌詞を公募して作られた後期EDパンプキンナイト(作曲 小林亜星!)はしんみりとさせてくれて、こちらも名曲だ。
登場人物紹介
エルと春助、二人の主人公を固める脇役のキャラもまた魅力的だ。
春助やエルが誤魔化したり嘘を言っても、即見破ぶるテッキンこと金小路先生。ヘタなコメディならコロっと騙される教師キャラはゴマンといるけれど、それが通じないのもまたテッキン先生の魅力と怖さ。なお、主要人物は男女それぞれ学校の男子寮、女子寮に住んでいる。
しかしこのアニメ、シティーハンターなみにヤクザやチンピラが良く出てくるなあ……。
青葉 春助(あおば しゅんすけ)
主人公。サンシャイン学園中等部2年桜組、応援団に在籍。女嫌いの熱血硬派。実家は女性用下着販売店。エルからは『しゅんすけくーん』と呼ばれている。
朝丘夏美 “エル”
中学2年生にしては身長が170センチと高く大柄なことから、「エル(L)」という愛称で呼ばれている。北海道岩見沢市出身。7歳のころ、テレビ局で演出の仕事をしている父親の仕事の都合で、北海道から本州へ引っ越し、サンシャイン学園に通い、春助と出会う。なお、母はあんみつ屋を経営。エルが岩見沢産まれ、出生時4500グラムだったというくだりはアニメ第12話のラブカセットの回にて、エルの口からしっかり語られており、興味深い。興味深いといえば、このラブカセット。「カセットテープに自分の“想い”を吹き込んで、相手に“言葉”にして伝える」というもの。80年代に実際にあったブームで、ソニーのウオークマンがキッカケになって当時の中高生に広まったようだ。2004年に公開された映画「世界の中心で愛を叫ぶ」でも同じく描かれているが、これは実際にあったコトなんですね。続編ではエルの身長は180センチまで伸びています。すげえ……。
テッキン先生
春助たちの担任の教諭でアントニオ猪木そっくり。愛車はムスタング。アニメではマイルドな描写だが、オソロシイサディスト。ところでムスタングや北島三郎やディズニーランド、チャゲ&アスカなどの固有名詞が本作で平気で出てくる一方で、「キャニコン」という架空のカメラ名になったのはなぜ。
赤井モン太
男子寮の寮長。ちょっと抜けているけれど、後輩の面倒見はいいみたい。なんと喫煙描写も。80年代は中学生の喫煙描写が当たり前でびっくり!はい、問題。赤井モン太くんのカバンの中に入っていたものは何?答えは生ビール(ミニ)の缶、ライター、タバコ、ミニカー。
小町
学園寮の食堂のおばさん。
まどか
小町の一人娘で、元気な小学生。
神崎先輩
女子寮の寮長。おしとやかそうだが、芯のありそうな女子生徒。
The・サンシャイン学園
主人公たちが通う中学校であり、本作の主な舞台。かなりおおらかな校風として描かれており、その様子は春助の制服の着こなしを見れば一目瞭然。
The・三浦みつる紹介
原作の三浦みつる先生の描く女性キャラって魅力的で肉感的な美人ばかりだが、三浦先生は原作者は別ですが『トリガー警視庁捜査四課チャカ班ファイル 』というザ・硬派な警察漫画も描いている。
警視庁刑事部捜査第四課、現在でいう警視庁組織犯罪対策部第四課、いわゆる暴力団対策のマル暴だ。こちらはかぼちゃワインのようなお惚気どころか、女性キャラはほとんど出てこず、出てくるのは刑事、覆面パトカーといった非常に男臭い劇画調のハードな作品で、本当にかぼちゃワインと同じ漫画家?という感じで何でコレを描いた?THE・男一匹、THE・びっくり。怖いわね。
ほかに、「ピンクスパット」は主人公の少女がボウリングの才能を見いだされて開花していくというTHE・王道的スポーツマンガだ。
しかし、昨今で有名なのは「コンビニまりあ」でしょうかね。ドラマ化されている。
あ、かぼちゃワインも実写映画化されているが、AVくずれみたいな酷い作品なのでここでは一切触れない。
なお、宮城県石巻市に属す島、田代島(猫の島で有名)へ行くための網地島(あじしま)ラインのマーメイド号には三浦先生が描いた人魚のイラストが!
参考サイト http://neco-ideas.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-a525.html
The・当時モノグッズ各種
エルちゃん人形
http://www.mandarake.co.jp/information/2010/01/21/21cmp02/
似てないけどかわいい人形。劇中にもエルちゃん・春助人形(着せ替え機能付き)が出てきたので、それをイメージしたもの?
エルちゃんシャンプー
http://ekizo.mandarake.co.jp/shop/ja/item-jpatt2872.html
エルの体をかたどった入れ物をした子供用シャンプー。チアガールの衣装をまとったエルなのだが、似てないどころか不気味で衝撃的……。
かぼちゃワインのまとめ
残念ながら三浦先生は2017年に漫画家引退宣言を採択。世界が悲しみに包まれた。かぼちゃワイン、とても言葉では言い表せないほど魅力的な作品なのだ。